太陽光発電の買い取り終了へ 入札制度で価格競争促す
2019/6/12 18:00日本経済新聞より 経済産業省は太陽光や風力発電の事業者がつくった電気を大手電力があらかじめ決めた 価格で買い取る制度を終了する。 買い取り費用の増加で消費者の負担が高まっており、新たな競争入 […]
2019/6/12 18:00日本経済新聞より
経済産業省は太陽光や風力発電の事業者がつくった電気を大手電力があらかじめ決めた
価格で買い取る制度を終了する。
買い取り費用の増加で消費者の負担が高まっており、新たな競争入札制度を導入して
コスト低減を進める。
2020年にも関連法を改正する。政府は再生可能エネルギーを今後の主力電源として
拡大する方針だが、遅れが目立つ送電網の整備などまだ課題も多い。
経産省は12年に固定価格買い取り制度(FIT)を導入した。
再生エネの電気を国が決めた固定価格ですべて買い取る仕組みだ。
費用は電気料金に上乗せされる。
買い取り費用は19年度で約3.6兆円にのぼる。うち家庭や企業に転嫁する分は
約2.4兆円まで膨らみ、見直しの必要性が指摘されていた。
経産省は対策として、ドイツなど欧州各国がFITの替わりに導入を進めている方式を取り入れる。
50~100キロワット超の中・大規模の太陽光や風力の事業者には、自ら販売先を見つけたり、
電力卸市場で売ったりすることを求める。
価格は取引先との交渉や市場の状況で変わることになる。
固定買い取りのメリットをなくす替わりに、卸市場で電力価格が急落し基準価格を下回った場合は
国がその分を補填する。
この措置を受けられる事業者は基準価格に関する競争入札で選ぶ。
入札に参加する事業者は自社の発電コストを考慮しながら基準価格の候補を出し、
経産省はその価格が低い順に一定数の事業者を認定する。
基準価格は落札した事業者ごとに違う価格になる見通しだ。
入札は数カ月ごとなど定期的に実施する。
落札した事業者は市場価格の急落時でも損失が膨らむリスクを回避でき、
中長期的に投資を進めやすくなる。
一方、日々の事業では、なるべく高く売れる取引先を見つけるといった経営努力が
必要なため、事業者間の競争が進んで電気料金が下がる効果が見込める。
小規模の事業用太陽光や家庭用の太陽光では買い取り制度自体は残すが、
買い取りは全量でなく自家消費で余った分だけにする。
買い取りにかかっていたコストは大幅に削減できる見込みだ。
月内に経産省の有識者会議で案を示し、早ければ20年の通常国会に関連法の改正案を
提出する。
政府は再生エネの構成比を17年度の16%から30年度に22~24%に高める目標を掲げる。
ただ普及拡大には買い取り制度以外にも課題は多い。
特に大きな障害は送電線の能力不足だ。
九州地方では送電網や本州との連系線が足りず、発電の抑制を求められる事態が頻発する。
東北地方では稼働していない原子力発電所用に送電線が確保され、
再生エネ事業者が十分に使えない問題もある。
電力を需要家まで確実に届けるインフラの整備を急ぐ必要がある。