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「太陽光発電事業の評価ガイド」 計画時や売買時の評価項目・手順がわかる

太陽光発電協会(JPEA)は6月29日、「太陽光発電事業の評価ガイド」(初版)を制定したと発表した。これは、太陽光発電事業の長期安定稼動による主力電源化を目指し、発電事業の継続にかかわるリスクを評価するために制定されたも […]

太陽光発電協会(JPEA)は6月29日、「太陽光発電事業の評価ガイド」(初版)を制定したと発表した。これは、太陽光発電事業の長期安定稼動による主力電源化を目指し、発電事業の継続にかかわるリスクを評価するために制定されたものだ。

このガイドでは、太陽光発電設備のみならず、土木・構造、土地・権利関係も含めた発電事業全体を評価することも内容に含めている。

ガイドの対象は、住宅用以外の地上や建築物などに設置される太陽光発電設備。なお、同ガイドによる評価は一定程度の専門性を持つ者が実施することが想定されている。さらに、評価項目によって専門性が異なるため、複数者が必要であることも想定されている。

太陽光発電の評価方法、評価項目、チェックリストなど掲載

同ガイドの主な構成は下記の通り。

  • ガイドの概要(利用方法などの説明)
  • 評価方法と解説(各評価項目のポイント・評価方法・判定例が示されている)
  • 評価項目リスト(評価項目の一覧表)
  • 参考資料1:評価手順(例)
  • 参考資料2:チェックリストとその用例(利用場面ごとの用例)
  • 参考資料3:結果報告書式(報告書の書式例)

上記のうち、評価項目は全162項目で、大きく分けて「土地・権利関係の確認(40項目)」「土木・構造に関する確認(46項目)」「発電設備の確認(76項目)」の3分野に分けられている。

なお、評価項目は、いつでも全項目を評価することが必須ではない。参考資料2には、利用場面ごとの評価項目の選択の事例が示されている。ここでは想定されるケースとして下記のような事例が挙げられている。

さまざまな場面ごとの評価に使用できる

計画・設計時の評価

計画段階などのリスクを明らかにし、事業計画の検証や金融機関の融資の際の資料とする。

竣工時の評価

竣工時などに発電所のリスクを明らかにし、竣工検査や損害保険の加入の際の資料、O&M実務の資料とする。

運用・保守点検時の評価

運用・保守点検のリスクを明らかにし、運用などのチェックや損害保険の継続の際の資料とする。

トラブル時の評価

トラブルのリスクを明らかにし、事故・故障の原因調査や災害時などの現状確認の際の資料とする。

売買時の評価

発電所のリスクをデューデリジェンス(D/D)により明らかにし、売買の際のエンジニアリングレポート(ER)などの資料とする。

例:太陽光発電所を売買する際の評価手順

上記の参考資料2にあるように、評価の時点、目的には多くの種類があり、様々な手順があり得るが、個別の手順検討の参考となるよう、参考資料1では評価手順の大きな流れを以下のように示している。

下記の手順は、評価依頼者が売買等のために発電事業の評価を評価実施事業者に依頼する場合、評価者が行う取り組みのモデルケース。

1:評価対象発電所の確認

  • 事業(設備)ID
  • 所在地(事業用地の全筆確認)

2:評価項目と評価深度(1次評価・2次評価)の検討

  • 目的に応じた評価項目を選択
  • 評価項目ごとに評価深度を決定
  • 必要図書準備を依頼→発電事業者(稼動前なら施工事業者など)

3:1次評価実施

  • 図書の確認(現地に入らずに実施可能)
  • 評価項目によっては、現地確認(目視など)

4:2次評価実施(選択していれば、若しくは必要になれば)

  • 現地の確認、調査、測定(通常、専門的な知識が必要。資格が必要な場合あり)

5:評価結果まとめ

  • 報告書作成(概要、詳細リスト、詳細説明)
  • 修繕・補修等が必要な事項を発見すれば早期に依頼者と協議

上記の評価結果を受けた評価依頼者は、発電事業の状況などを把握し、さらなる詳細評価、売却、購入、保守点検、修繕などを判断する。

太陽光発電所のリスクを洗い出すためのガイド

固定価格買取制度(FIT)創設以来、新規参入し設置される再生可能エネルギー発電所には、専門的な知識が不足したまま事業を開始するケースもあり、安全性の確保や発電能力の維持のための十分な対策が取られないことなどが課題となっていた。

そこで、2017年4月に改訂FIT法が施行され新たな認定制度の運用が開始された。法整備により適正な事業運営を促すとともに、今後、太陽光発電が主力電源になってゆくためには、すでに導入された設備も含めて長期安定電源へと転換してゆく必要がある。

長期安定稼動のためには、適切な設計・施工、適切な保守点検が必要であるが、これまでの発電設備を中心とした技術的なマニュアルなどによる周知・普及だけでなく、今後は、土木・構造や土地・権利関係も含め、発電事業全体を評価し長期安定稼動に対するリスクを洗い出し、発電事業全体の健全化を図ることが必要だ。

同評価ガイドは、こうした背景により、太陽光発電のリスクを評価するため「太陽光発電事業の評価ガイド策定委員会」により制定された。

 

【参考】